日本北方言語学会 Japan Association of Northern Language Studies

津曲敏郎賞(北方言語学会研究奨励賞)

第2回(2024年度)

受賞者

日髙 晋介 氏

受賞論文

「チュルク諸語における副動詞の諸相と、中央アジアのチュルク諸語における V-(I)p bol-」

授賞理由

本論文は,中央アジアに分布する5つのチュルク系言語を対象として,副動詞と補助動詞bol-「なる」から構成される述語形式がどのような機能を持つかを明らかにし,この述語形式の通時的変遷について解明しようとしたものである.筆者はまず,研究対象となる5つのチュルク系言語において,上記の述語形式が動作の完遂を表せるが能力可能を表せない点で共通することを,自ら集めたデータから示している.その上で先行研究で見解が分かれる通時的変遷に関して,モダリティの意味領域地図の分布も根拠に,目的副動詞から継起副動詞への置き換えが起こったという考えの方が妥当性が高いと結論づけている.

選考委員会では,特集「副動詞」の企画者として副動詞の定義と分類に関する類型論的な整理を行った点と,5つの同系言語について広範な調査分析に取組んだ点が高く評価された.先行研究が示す意味領域地図を十分に検証しないままに取り上げた点などの課題も残るが,関連する先行研究も丁寧に参照しながら興味深い議論を行ったことで今後の研究にも貢献しうると判断される.

授賞式

授賞式は,2024年9月22日(日)に北方言語学会第7回大会において行われました.授賞式では日本北方言語学会の堀博文会長より賞状と記念品が贈呈されました.

ceremony

受賞者のコメント

この度は、第二回津曲敏郎賞を賜りまして、誠に光栄に思います。北方言語学会の役員のみなさま、編集委員会・選考委員会のみなさま、本受賞論文を査読してくださった先生方に感謝を申し上げます。 今回の受賞論文は、私が企画・立案した、第166回日本言語学会ワークショップ「チュルク諸語の副動詞にまつわる諸問題 ―節連結・副詞句・複雑述語―」での発表を基にした論文です。二年ほど前にチュルク諸語全体を視野に入れた議論の場を作りたいという思いから、大学院生を含めたチュルク諸語研究者に声をかけ、勉強会を立ち上げました。この一連のワークショップや『北方言語研究』での特集論文は、勉強会で副動詞のように言語類型論的に注目されているカテゴリー等、自分一人だけでは解決できない問題について様々な言語の研究者と共に議論を深めてきた成果です。現在に至るまでワークショップ・勉強会に参加し、協働してくださっているメンバーに感謝を申し上げます。 津曲先生は、生前『北方言語研究』を北方言語研究者のネットワーク作りの一助としたいとおっしゃっていたと伺っております。私が大きな問題へのアプローチとして研究者間の協働という考えに至ったのには、『北方言語研究』で特集を組んで様々な言語類型論的問題を議論してこられた諸先輩方の成果を目の当たりにしてきたことの影響が大きいと感じています。『北方言語研究』という議論の場の基盤を作ってくださった津曲先生に感謝を申し上げるとともに、今までに範を示してくださった先輩方に感謝を申し上げます。 今後も中央アジアをフィールドとしたチュルク諸語の研究にまい進するとともに、より多くの研究者と協働することでこれまでの枠を超えたより大きな問題にもチャレンジしていきたいと考えており、今回の津曲敏郎賞の受賞に背中を押していただいたと感じております。ご指導ご鞭撻のほど、どうぞよろしくお願いします。

公開日: 2024/09/22

過去の授賞

第1回 第2回

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Toshiro Tsumagari Memorial Award for Outstanding Research

The Second Award (FY2024)

Winner

Shinsuke Hidaka

Publication for the Award

“Issues Related to Converb Use in Turkic Languages and V-(I)p bol- [V-CVB be-] in the Turkic lLnguages of Central Asia”

Ceremony

ceremony

Posted on: 2024/09/22

Past Awards

The First Award The Second Award

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